[鑑賞散歩]いつだって持ち合わせたい、底力

美術館

手に職をつけて、働く。
それが好きなことで得意なことなら、もう天職と呼べるのかもしれない。

あなたも何かしらのプロになりたい、と思ったことがあるのではないだろうか。

今回は河鍋暁斎(かわなべきょうさい・1831.5.18〜1889.4.26)を紹介します。
暁斎は幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師・日本画家。

今回は東京ステーションギャラリーで行われていた「河鍋暁斎の底力」展に行ったことから考えた底力だと思う画力、人柄や家族を紹介したい。
これから展覧会に行く人、河鍋暁斎に興味ある人、画家の面白い一面を知りたい人などに見ていただければ幸いです。

私が感じた底力として「画力」「人柄・家族・弟子」を中心に紹介していきますね。

画力

底力、まずは画力。
「河鍋暁斎の底力」展では、100%河鍋暁斎の作品が展示されていた。
娘や弟子が手を加えたよそゆき仕様にした作品ではなく、河鍋暁斎自身の作品たちである。それは素描、下絵、画稿、席画、絵手本など。

カエルを描きたいと思ったのが3歳のとき、7歳のときに浮世絵師として有名な歌川国芳(うたがわくによし・1798〜1861)に入門、10歳のときに狩野派の絵師・前村洞和(まえむらどうわ・?〜1841)に入門。自他ともに認める絵への執着「画鬼(がき)」であったという。

実は暁斎には珍しい着物の柄を求めて女性を追い回したり、生首を見つけたときに持ち帰って写生したり、近所が火事のときも火事の様子を観察するなど面白いエピソードが残る。

リクエストされたどんな絵もその場で描き、依頼された絵には時間をかけて注文主を満足させるものを描いた。当時も人気の絵師だった。
展示されていた下絵は日本では過去に「紙屑」と評されたことがあるそうだが、毎日綴っていた絵日記が人気で人にあげてしまったためほとんど残っていないほどの人気者である。それが紙屑であるわけがなく、動きのある絵、毛並みや着物の模様まで緻密に描かれた絵はそれだけで完成された美術品だと思う。

人柄、家族、弟子

2つ目の底力は人柄。

私が着目したのは、暁斎の面倒見のよさ、そして家族や弟子の関わりである。

作品の下絵を描いているときに弟子に教えを乞われたら、下絵の途中でもその紙にすぐに見せるようにリクエストの絵を描いた。面倒見の良い人だったのだと思う。
しかし、弟子は絵を辞めてしまったり、他の人の元に行ってしまったり…
弟子の中で活躍したのはジョサイア・コンドル(1852〜1920)くらいであろう。コンドルは、鹿鳴館の設計を行うなど有名な英国人建築家である。

また、娘の暁翠(きょうすい・1868〜1935)は幼い頃から暁斎に絵を教わり、彩色を行うなど才能を引き継いだ。そして、女子美術大学のはじめての女性教授になっている。
展覧会の中には、絵の手本として描かれた絵も展示されていた。絵が好きな人間としては、そのような環境は羨ましいかぎり… !

そして、家族の縁といえば、暁斎の曾孫にあたる河鍋楠美氏が暁斎の自宅を改築して、埼玉の蕨に財団法人 河鍋暁斎記念館(1997年の開館当時は「暁斎記念館」)を開館している。
自ら暁斎作品を研究したり、開館後に海外の作品を買い付けたり、魅力的な作品が残っており、暁斎の人脈が広かったおかげでもあろう。

暁斎の孫と曾孫は「画稿そのものの線の美しさに惹かれて捨てられなかった」そうだ。

開館当初は2164点だった所蔵品は、現在では3374点にもおよぶという。戦後にあまり知られなくなっていったことを受けて、暁斎の研究誌や復刻本を自費出版をする、暁斎の展覧会を開催するなどの活動も功を制しているのだろう。暁斎は今や人気の画家だと思う。このような子孫がいることはとても素敵。

好きなことを続ける努力と人柄や家族・弟子の絆

展覧会では暁斎の画力にスポットを当てて「底力」としていたが、私にはそれだけではないように感じた。

画力の裏には、絵を描き続けた努力がある。
また、ここまでの人気と現存している作品数の裏には、暁斎の人柄と家族や弟子などの絆があるのだと思う。

日々の努力、面倒見がよく交友関係が広い人柄、素敵な作品を残しそれを伝えてくれる家族、親族、そして弟子。
何かを努力し、頑張っていく人、何かを残そうと思っている人は恵まれるのかもしれない。

河鍋暁斎の底力
東京ステーションギャラリー
2020年11月28日(土)〜2021年2月7日(日)
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202011_kawanabe.html

■河鍋暁斎、オススメ本


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