[鑑賞散歩]かわいい、ゆかい、大津絵コレクション

博物館

大津絵

大津絵の愛らしさに心奪われたのはサントリー美術館で開催された「日本の素朴絵」展のとき。大津絵は庶民の素朴絵の章で展示されていました。ゆるいお顔の鬼や猫。これは発祥地の滋賀まで見に行かなければ!と思い、本当に大津市歴史博物館まで来てしまいました。

大津絵とは、江戸時代に描かれた庶民絵画。大津でお土産物として旅人に売られていたそうです。私のイメージでは鬼の絵が最も印象的ですが、初期は神仏絵が中心、そのあとは風刺の絵が増え、画題が増えていったとのこと。

三井寺内にあった大津絵

鬼の絵というのは「鬼の念仏」が主題のもの。人気の画題で、子供の夜泣きを止める効能があるという。また僧の格好をして形ばかりの善行を行う姿とされ、偽善者を風刺したとも。見ての通り赤い鬼で、現在一般的に知られている鬼のイメージは大津絵の鬼によって決まり、広まったと言われています。

大津絵に影響された外国人

海外でも注目されていた大津絵。
以下のような人物に影響を与えました。

・ドイツ人の建築家:ブルーノ・タウト
・パブロ・ピカソ
・バルセロナ出身の画家:ジョアン・ミロ
・彫刻家:エウダル・セラ

この中で日本人にとって有名なのはパブロ・ピカソ(以下ピカソ)でしょう。
ピカソは1900年代から日本美術に関心を持っており、1920年代からは大津絵を評価していた日本人画家との知遇を得ています。大津絵《猫と鼠》を額装し、手元に大切に置いていたそうです。

大津市歴史博物館で撮影
《猫と鼠》

2019年にはパリでヨーロッパ初の大規模な大津絵の展覧会が行われた。
4〜6月、約120点の作品を展示。ピカソの旧蔵品も展示。

大津絵を購入してきた

大津絵歴史博物館で売店のスタッフさんに「大津絵を購入したいのですが、どこか売っている場所ありますか?」と聞いたところ、地図を持たせてくれました。
その場所はその名も「大津絵の店」!!

「鬼の念仏」のシルエットがこれまた可愛い・・・

周りと一通り見回して、こちらの商品を購入してきました♪

←大津絵の包みも大津絵柄

2020年は子年ということもあり「猫と鼠」が主題の大津絵にしました。

この主題は鼠が夢中になって大杯の酒を飲み、その前で、猫が目を爛々とさせて、嬉しそうに肴の唐辛子を箸でつまんで差し出す。この鼠と猫の酒宴は、酒に飲まれた鼠の予期される結末に対しての警告。
…なのですが、こちらは猫と鼠が逆に描かれていますね。猫は鼠を前に酒を飲み、鼠は食べられるれることも知らずに呑気に唐辛子を差し出しています。

18世紀初期から見られる本来のこの画題は、「鼠捕る猫は爪隠す」という諺を戯画化したもの。
絵には「おそろしきものをにやんともおもはざる 心から身をつゐにとらるゝ」(恐ろしきものを何とも思わざる 心から身を遂に取らるる)のような道歌が添えられることもある。酒に呑まれて我を忘れることへの戒めと、うまい話ほど恐ろしいものはないという、警戒心の必要性を説いたものです。

今回の絵は 「聖人の教えを聞かず終に身を滅ぼす人のしわざなりけり」 という教えを意味しています。
また徳利に 「上々諸白」 とありますが、これは 伊丹・池田(兵庫県)が中心産地である 江戸にも盛んに送られた名酒だそうです。
猫と鼠とお酒を酌み交わせたら、さぞ楽しいだろうに、と少し考えてしまいました。

大津絵が見られる場所

大津絵を所有しているのは
・【滋賀】大津絵美術館
・【東京】日本民芸館
・【静岡】 浜松市美術館
・【千葉】国立歴史民俗博物館  など

参考書籍

・クリストフ・マルケ『大津絵 民衆的風刺の世界』角川文庫 2016.7.25
・尾久彰三 監修『大津絵 日本民芸館所蔵』 東方出版 2005.2.8

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